セミナー終わりました

N212

7月22日に、東海大学札幌キャンパスで開催した「和文書体セミナー」、何事もなく無事に終了しました。N212教室の席もしっかりと埋まり、ノートにメモを取っている学生さんも見受けられて、講演者としては本当に嬉しかったです。多くの学生さんと一部の教職員の方々、一般の方が1名といったところでしょうか。

〈書体の種類〉では明朝体・ゴシック体・丸ゴシック体の違いを。〈大まかな書体の使い分け〉では大飯原発の判決が決まったときのハタにはどの書体が似合うのかという解説を。〈細やかな書体の使い分け〉ではひとつの作品の媒体における書体の使い分けを。〈写研とモリサワ〉ではこのブログに書いた記事と同じ内容を。〈オールドスタイルとニュースタイル〉では最近の丸ゴシック体に関する動向や、筑紫オールド・秀英体・築地体・黎ミン・TP明朝の紹介と、合成フォントの使いかた等の解説を。〈UDフォント〉ではモリサワ・イワタとヒラギノUDの違いを。〈書体の買い方〉ではパッケージ・ダウンロード版と年間ライセンス版の紹介を。〈良い書体とは〉ではデザイナーや識者による様々な見解の紹介を。あと先週になって急ぎで作った〈フリーフォント〉では「もじくみ仮名」や「IPAフォント」、そして最も旬な話題「Source Han Sans」の紹介を行いました。

オールドスタイルとニュースタイル

〈オールドスタイルとニュースタイル〉のところで、「この上2つと下2つのうち、どちらがイマドキだと思いますか?」という質問を聴衆(ほとんど学生)に投げかけたのですが、下2つを選んだ方が多かったです。最近はよく「若いひとたちはオールドスタイル(=上2つ)の書体を好む」という話があったのですが、今回はそうじゃなかったみたいですね。もちろん自分の訊き方や場の空気の問題もあるので、今回の話がどれだけ信ぴょう性あるものかは分かりませんが……。(ちなみに上から、筑紫A丸ゴシック・秀英丸ゴシック・スーラ・新丸ゴです)

懸念していたポスターですが、A4サイズがいちばん掲示されていたように思います。学生の履修に関するお知らせなどを掲示する場所にこっそり貼られていました。いちどネット上にアップした画像がそのままエレベーター前のモニタに転用されていたりも。これまで大学で作ったポスターは大体インパクトに欠けるものが多く反省していたのですが、今回はわりとうまくいった気がします。デザインそのものだけではなく、掲示場所とのバランスが良かったのかもしれません。

もうFacebookで散々書いた話題ではあるのですが、ブログという形できちんと残しておきたいので(タイムラインではすぐに流れてしまうので)、ここに改めて記させて頂きました。前回の記事をリツイートしてくださったり、告知してくださった皆さん、また当日会場に来てくださった皆さんに改めて感謝の意を表します。ありがとうございました。

22日に、和文書体セミナー

大学でお世話になった伊藤明彦教授から「大学にフォントの話をしにきませんか」というお誘いを頂き、今月22日(火)に、東海大学札幌校舎で講演をさせて頂くことになりました。ありがとうございます。タイトルは、伊藤先生からのメールにあった「小倉佑太のフォント・セミナー」をだいたいそのまま。欧文書体については全く話さないのと、少しだけ写植(=フォントと呼べないもの)の話もするので「フォント」から「和文書体」にしています。自分の名前を入れたのが少し恥ずかしい。開催要項は以下のとおりです。

小倉佑太 和文書体セミナー
2014年7月22日(火)
16:40〜18:10(授業5コマ目)
東海大学札幌校舎 N212 にて
入場無料/一般参加可能(事前申込不要)
主催=伊藤研究室

「札幌キャンパス」ではなく「札幌校舎」と書いたのは、以前、母校である旭川校舎(今年=昨年度3月に閉鎖)で「フィン・ユール展」のパンフレットを作ったときに、「東海大学北海道キャンパスの中の、札幌校舎・旭川校舎という呼び名が正しい」という話を伝え聞いたため。以降、ずっと「〜校舎」という表記にしてきました。いま、公式Facebookに「東海大学札幌キャンパス」と書かれているのは、旭川キャンパスが閉鎖したからでしょうか。

話す内容は以下のとおり。

・書体の種類
・大まかな書体の使い分け
・細やかな書体の使い分け
・写研とモリサワ
・オールドスタイルとニュースタイル
・UDフォント
・書体の買い方
・良い書体とは
・フリーフォント
ほか

明朝体_スライド

スライドは上のような感じです(全てInDesignで組んで、PDFをフルスクリーン表示します)。全部で211枚。テレビのテロップのように、画面をコロコロ変えていく仕組みを考えたらこうなりました。

内容も、プロやアマチュアではなく、あくまでも学生さんに向けた講演会なので、もう初歩の初歩から解説(それでも難しいところがあるのかな……)。私は「分かる人には分かる」というのが余り好きではなくて「分からない人にも分かってもらう」スタンスなので(これは信条というより性格)、ふだんから目線を下げた話をするように心がけているのですが、ちゃんと出来ているでしょうか……。「分かるまで勉強してこい!」というひとも正しいのかもしれないけど、そうなれない……。というわけで、あまりに専門的な話はしないので、これはそこそこの知識をもった人が来ても面白くないと思います(笑)。

20140724_小倉佑太和文書体セミナー_A3トンボ無し

告知ポスターはこんな感じ。伊藤先生から「ポスター・フライヤーの制作をお願いします」と連絡が来たときにサイズを尋ねたら「大判プリンタで出力しても良いですよ!」との事で、いちばん大きなものがB2ポスター。あとはお手頃サイズのA3とA4、全てあわせて3種類。紙のサイズによって、ボディコピーの級数やレイアウトを変えています。ただ、A3のポスターって、本当に必要なんだろうか?というのが最近の疑問。学生時代、旭川校舎では沢山のA3ポスターを作らせて頂きましたが、そのどれもがインパクトに欠けるものでした(これは私のデザイン力不足も大きいと思います)。貼るにしては小さいし、持ち帰るサイズではない。講演日に札幌校舎へ行ったとき、どういうふうに掲示されているか見てこようと思います。ポスターって、掲示されているのを見たときに、いちばん反省するんだよな……。

背景は、「文」という文字の上と下を分割したもの。「文」がリピートしているようにも見えますが、「字」や「章」という文字が続いているようにも見えます。「文」の交差部分が蝶結びのように見えるのも狙っています。少しでも「何だこれ?」と思ってもらえるようにしました。当初は、明るいオリーブ色を使い、もう少し華やかな印象にする予定だったのですが、意図せず他の方が作られた有名なポスターに似てしまったため、真似だと勘違いされないために、少し地味な色に変更。それ以外の色は黒と赤だけ。背景を変わった形にしたおかげで、「タイトル→日時→場所」+「読みたい人はボディコピーも」という、右上から左下(+読みたい人はその右も)への視線誘導が出来たかなと思います。

タイトルと開催場所を記した書体は「ナウMB(タイプバンク)」という、横画の太い明朝体(これを明朝体と呼ぶべきなのか、どうか)。普通の明朝体だと弱く、ゴシック体だと平凡すぎるので、少し目に引っかかりのある書体を選びました。「芸術工学部(旭川)卒業生」の部分は「ナウMM(タイプバンク)」、ボディコピーの書体は「漢字=游明朝体Pr6M(字游工房)・仮名=游明朝体五号かなM(字游工房)・疑問符感嘆符=秀英明朝L(モリサワ)」、入場無料の表記は「ナウGB(タイプバンク)」、日時の欧文は「Source Sans Pro Semibold(アドビシステムズ)」。

あと、会場に来てくださった学生さんのために、「覚えておきたい和文書体」という5枚綴りのプリントを作りました 。これは「良い書体」を紹介するのではなく、私が独断と偏見で「この書体はよく使われているだろう」というのをセレクトしたもの。自分の持っている書体しか使えないので、たとえば「S明朝体(ニィス)」とかはありません……。

覚えておきたいフォント

と告知しましたが、5人くらいしか来なかったらどうしよう……。かと言って沢山来られても(たぶん無い)すごく緊張するんですが……。ともあれ、最大限の講演が出来るように誠心誠意がんばりたいと思います。あ、あとポスターのボディコピーにはこう記しました。

どの書体も同じように見えちゃうけど、違いは? こんな場面にはどんな書体が似合う? 書体はどう買えば良いの? グラフィックデザイナーを目指す人にも、そうでない人にも、和文書体のことを楽しく解説します。初心者大歓迎!

どうぞ皆さん、お気軽においで下さい。

写研とモリサワ、をわかりやすく説明

近々、某所で「和文書体について」というテーマでお話をさせていただく機会があります。そのために「写研とモリサワ」という資料を作っていたら、思いのほか面白く仕上がり、せっかくだから、ブログの記事にしてみようと思い立ちました。「電子の文字――モリサワと写研」(PICTEX BLOG)や、「写研 – Wikipedia」を読めばわかってしまう内容ですが、写植というものを知らないひとにも、読みやすくまとめたつもりです。ミス表記や事実誤認がないように尽力しましたが、もしなにかあればお知らせください。

まず、写植とは何でしょうか。MacによるDTP(古くは QuarkXpress や PageMaker、今は Adobe Illustrator や Adobe InDesign を使って、印刷物を作ること)が普及する以前、印刷物の文字を組むために、使われていた技術のことです。これを人に説明すると「あぁ、金属に文字が彫られているやつですね! あの、凹凸が出るやつ」と言われることが多いのですが、それは写植以前の、金属活字と呼ばれるものです。その後の写植については、わかりやすくまとまった説明が「亮月写植室」というWebサイトにあります。

「しゃしょく」(または「しゃちょく」)と読みます。
正式には「写真植字」といい、写真の原理を用いて印字する方法のことを指します。いわば文字の写真で、文字の形を撮影して感材に焼き付けたものも写真植字(写植)と呼びます。

(「亮月写植室*写植ってなに?」 より)

こちらの動画をご覧ください。写植とは、こういった機械を使って行われていました。



上の動画には写研の写植機、下の動画にはモリサワの写植機が映っています。

写植機(写真植字機)は、石井茂吉森澤信夫のふたりによって発明されました。ふたりは「写真植字研究所」という会社を立ち上げ、より新しい写植機の開発に勤しみますが、その後石井と森澤は別れ、石井は「写研」、森澤は「モリサワ」(設立当初は「写真植字機製作株式会社」)という会社を興します。写研の所在地が東京、モリサワの所在地が大阪だったので「東の写研、西のモリサワ」等と呼ばれましたが、同様に「書体の写研、機械のモリサワ」等とも呼ばれました。美しい書体を数多く世に出していた写研は、業界でナンバーワンのシェアを誇り「世の印刷物の70%が写研の書体である」とさえ言われるようになります。「写植の歴史、といえば、写研の歴史のことを指す」という記述もあるほど。

80年代の後半に、Macを使ったDTPのシステムが開発されます。そこに書体を提供したのがモリサワでした。90年代の半ばからは、写植とDTPの勢力が逆転しはじめます。しかし、そのころになっても、写研は「書体と組版は一体である」として、写研の書体が他社製のシステムで使用されることを許さず、DTPでは使えないままです。2011年にいちど、写研もDTPで使える書体をリリースすることを発表しましたが、2014年になっても「完璧にやろうとしているので時間がかかってます」との事で目に見える進展はなく、その様子はブラックボックスに包まれたままです。そういえば、写研はWebサイトもありません。あの一大勢力を放った写研の書体を、今この時代に使うのは難しいのです。

写研の書体を知るひとは、モリサワの書体が多く使われる現状に違和感をおぼえる人も少なくないようです。きちんと統計をとったわけではありませんが、写研書体を好むひとは、モリサワではなく、ヒラギノや游明朝体・游ゴシック体などをデザインする「字游工房」(写研出身の鈴木勉・鳥海修・片田啓一が設立。現在は鳥海氏が代表を務める)の書体や、フォントワークスのフラッグシップフォントである「筑紫書体」(写研出身の藤田重信氏が中心となってデザイン)に流れる人が多いように思えます。

モリサワの書体が全て悪いというわけではありません。リュウミンやゴシックMB101等という、一定の支持層を持つ書体も存在しています。また、なにより、これだけ多く使われているという現状は、さほど大きな質の悪さは目立たないということかもしれません(これについては、様々な意見があると思います。DTPの黎明期にモリサワが使えたから、多くのデザイン会社がモリサワフォントを導入し、他社や印刷会社との互換性が確保されたことや、写植時代の知名度もあることでしょう)。「写研だから良い」とか、「モリサワだから悪い」とか、ブランドで判断することが正しいとも思いません。詳細は書きませんが、筆者は、写研の有名な書体にも、バランスの悪さを感じることがありますし、モリサワの書体に良い感想を持つこともあります。写研があまりにも神格化されてしまうことには違和感もおぼえます。

しかし、かつて日本の印刷物を支えた書体が、そのまま忘れ去られるのが怖いのです。「写研の書体がようやくDTPで使えるようになりました」という時代がやってくるのを、ただ、ひたすらに願うばかりです。

ゴナDB

ナール

石井太ゴシック

石井中明朝

写研書体のサンプル。上から「ゴナDB」「ナールD」「石井太ゴシック」 「石井中明朝オールドスタイル」。上から3つは「タショニムフォント見本帳No.5A」(写研)より。いちばん下は「タイポグラフィの基礎」(誠文堂新光社)(※原典=「写真植字」33号/1980 写研 5頁)より。最後のものはOKLではなくOKSの模様。実際にはOKLが多く使われたとか。