年始なので、気になるフォントの感想を書いてみる(丸ゴシック体編)

◆丸ゴシック体

◯筑紫A丸ゴシック
「ナール系」とも言う、字面の大きい丸ゴシック体が多かった中で、写研の「石井丸ゴシック」のような字面の小さめな丸ゴシック体として登場したもの。その後このような丸ゴが他メーカーからもリリースされるが、この書体はなんだか他のものにはない「みずみずしさ」を持っているような気がする。

◯丸アンチック
筑紫丸ゴシックとほぼ時を同じくして登場した、ふところの小さめな仮名書体。「新丸ゴ」と混植することを前提に作られたが、新丸ゴは字面の大きいものなので、秀英丸ゴシックや平成丸ゴシックなどの漢字と混植して使っても良いだろう。

◯秀英丸ゴシック
こちらもふところの小さめな丸ゴシック体。むかしからある書体のような落ち着きを感じるのは自分だけだろうか。「明朝体・角ゴシック体編」で書いた「リュウミン」や「游ゴシック体」のように、自分の中でのスタンダード。

◯タイプバンク丸ゴシック
可愛らしさと真面目さを兼ね備えている、とても好きな丸ゴシック体。DEとHのようなウエイトは秀英丸ゴシックには無いため、こちらも自分の中でのスタンダードである。筑紫丸ゴシックや丸アンチックのリリースよりもずっと前からある書体だが、ナール系のようなふところの大きなものではない。RとHには混植用の「味岡かな」(築地・良寛・小町・弘道軒)も用意されている。2010年に、より字面の小さな仮名「ちび丸ゴシック」もリリースされた。

◯新丸ゴ
ふところの大きなナール系丸ゴシック体。細いウエイトで小さく使っても「丸ゴらしさ」が損なわれないと思う。太いウエイトでも漢字が潰れないので使いやすい。

◯スーラ
DTP黎明期に登場、写研「ナール」に近いものとして普及した。この書体の仮名は、丸ゴシック体にある「かわいさ」だけではなく、独特の「かっこよさ」も兼ね備えていると思う。同社(フォントワークス)の「マティス」のように、開発の背景を知りたい。こちらも細いウエイトで小さく使っても「丸ゴらしさ」が損なわれないと思う。

◯ヒラギノ丸ゴシック体
ナール系の丸ゴシック。たいへん明るい表情をしており字面が大きめ。線の抑揚が美しい。

◯ヒラギノUD丸ゴ
同じ字游工房デザインである「秀英丸ゴシック」よりも少しモダン寄りにしたい時に使う。素朴な表情でかわいい&使いやすい。ウエイトが4つあって使いやすい。

◯丸丸ゴシック
仮名が3種用意されている。個人的に仮名はAが好き。いちばんよく見かけるのはBのような気が。漢字も2種あるが、アールが大きめの漢字が面白い。書籍「哲学用語図鑑」で見て惚れてしまった。

* * *

次はポップ体や筆書系を取り上げたいのですが、取り上げる基本書体の数をもっと増やしたいという気もする(^_^)

(21:15追記)

字面の大きなナール系丸ゴシックは、ナールと新丸ゴだけ、というご意見をいただきました。試しに「(上から)新丸ゴ・スーラ・ヒラギノ丸ゴ」を比較してみましたが、とりわけヒラギノ丸ゴはナール系ではないのかも。貴重なご意見ありがとうございます!

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あけましておめでとうございます

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あけましておめでとうございます。

昨年も多くの方にお世話になりました。大きな出来事……はありませんでしたが、振り返ると、本当に良い一年だったなという気持ちです。ここ数年はずっとそうですが、昨年はとりわけその気持ちが大きかったですね。安定していました。

……なんだかあまり中身の無い地味なご挨拶となりましたが、どうぞ皆様、本年もよろしくお願い申し上げます。今年は本の衝動買いを控えます。

年末なので、気になるフォントの感想を書いてみる(明朝体・ゴシック体編)

◆明朝体

◯游明朝体
見ると背筋がシャンとする思い。縦組みだけではなく横組みベタでも気持ちが良い。「水や空気のような書体」を目指して作られたというコンセプト通り、この書体で組まれた長文を読むことは疲れにくい。主張する書体ではないので書籍に向いているが、自分は書籍を作らないので、仮名を、華やかな「游明朝体五号かな」や「游明朝体36ポかな」にすることが多い。この原稿を書くのも游明朝体でプレビューしている(アプリ「stone」使用)。

◯リュウミン
「迷ったらこれを使う」と言うくらいに汎用性の高い明朝体。仮名のデザインがとても好き。シンプルなデザインにも下世話なデザインにも合う絶妙なバランス感覚。漢字がやや弱く見えるものの、もしここに深みがありすぎると使う場面を選ぶと思う。チラシ等で仕方なく長体をかけても綺麗。自分の年代(88年生まれ)には最も馴染みのある明朝体ではないだろうか。

◯ヒラギノ明朝体
上品で華やかな紙面を作れるモダンな明朝体。最も太いウエイト(W8)でも安心して見ることの出来るデザイン。この書体に合わせて作られた仮名書体(游築五号仮名・游築36ポ仮名)はリュウミンと組み合わされる事のほうが多いが、やはりヒラギノとの混植が好き。

◯筑紫明朝
個人的に使うのが難しいと感じている書体。「使うのが難しい」と感じる理由のひとつに「意図的な墨溜まり」があり、すっきりとした他の書体と合わせる技術が自分にはない。しかし世間での上手な使用例を見つけると「現代的で格好良い」という感想を抱いて見入ってしまうことも多い。筑紫明朝は筑紫のシリーズで統一された紙面でこそ真価を発揮するもののような気がする。この書体で「理路整然とした言葉」をバンバン連ねられると気持ちが良い。

◯秀英明朝
非常に落ち着いており、かつ奥ゆかしいデザイン。他の明朝体に比べ、横線が太めに設計されている事が気持ち良い。前記した「游明朝体」が秀英明朝に近い形をしており、並べてみると、秀英が男性で、游明朝体が女性といった印象。この書体で長文を読むと、身体の芯からあたたまってくるような感覚があるから不思議だ。

◯マティス
すごく独特のデザイン。とくにこういう漢字は他にない。作られた背景がとても気になる明朝体。「明朝体」としてだけではなく「ディスプレイ書体」としても分類できるのでは。気づけばタイトル等に使ってしまう明朝体。

◯イワタ明朝体オールド
本文用に作られていると思うのだけれど、大きく使われているケースも多い明朝体。他の明朝体と全く違うフォルム、しかも手描き文字とのバランスから大きく離れているにも関わらず「上品」「オーソドックス」という枠からはみ出る事のない稀有なデザイン。

◯TP明朝
公式サイトにある「光の記憶を」というフレーズが本当に似合う明朝体。横組みに特化した仮名は見慣れるまでに時間がかかるが、オンリーワンな現代性に惹かれてしまう。最新のサブカルチャー(マンガ・アニメ等)から生まれたイラストレーションとの相性が抜群に良い。他の書体がCMYKならTP明朝はRGB、みたいな印象。

◯凸版文久明朝体
最初に見た時から美しいと感じている書体。筑紫明朝のLB・RBや秀英明朝も含めた横線の太い明朝体は、自分の目に良く映る。その理由は「見やすさ」だけではなく「デジタルデバイスでゴシック体ばかり見てきたから」だろう。

 

◆ゴシック体

◯游ゴシック体
デジタルフォントで最も好きなゴシック体。本文にもタイトルにも合う。これに限らず、游書体ライブラリーで紙面を構成すると、紙面全体が優しさに包まれる。そして自分は明朝が「迷ったらリュウミン」なら、ゴシックは「迷ったら游ゴ」なのである。

◯中ゴシックBBB
ある本には「存在してはいけない書体」とまで書かれていたが、どうにも嫌いになれないのは、やはり「いちばん見慣れている書体だから(88年生まれ)」だろう。雑誌「ブルータス」がこの書体をやめることがあったら、ちょっと悲しい。

◯こぶりなゴシック
これと同じ、字游工房デザインによる游ゴシック体があまりにも好きなせい(しかもそれがMacにバンドルされたせい。游ゴシック体もこぶりなゴシックもそっくりなのである)でめっきり使わなくなってしまったが、憧れの書体として昔、パッケージで購入した書体。游築五号仮名もそう。その後、モリサワパスポートで提供されたが、自分の中ではパスポート収録本文向けゴシック体不動のナンバーワン。

◯タイプバンクゴシック
游ゴシック体やこぶりなゴシックと似た位置にある書体だが、それらと違うのは、「意図的に線質を柔らかくする処理」が成されていない事。それがよい。モリサワパスポートにはコンデンス用に作られたものだけが収録されているが、長体をかけない限りは昔からあるものを使いたい。

◯新ゴ
写研「ゴナ」との比較がよく見られるが、よくよく見ると「ゴナ」とは別書体だと思う。あえて比較すると、フォーマルでかしこまったゴナに対して明るく遊ぶのが巧い新ゴという印象。新ゴよりゴナのほうが好きという意見が根強く、まあ自分もそうなのだが、ゴナがOpenTypeフォント化されても上手に使い分けていきたい。

◯ゴシックMB101
キャッチコピー等に使うゴシック体としては最もオーソドックス。これを使うとなんか成立した気になるから不思議だ。「た」「か」「ま」あたりが非常に素直な形をしていると思う。細いウエイトは書籍本文向けではないが、賑やかなチラシなどの「勢いのあるもの」にはよく合う。というか、新ゴとMB101はチラシ二大巨頭みたいなイメージ。

◯たづがね角ゴシック
「游ゴシック体」や「こぶりなゴシック」に近い表情をしているが、こちらのほうがポップで現代的な気がする。最初からFrutigerが混植されているのが特徴。話は逸れるけど、欧文サンセリフではHelvetica系よりFrutiger系のほうが好きなんだよな。

◯AXIS
スターバックスの店頭や、アップルの公式サイトへ行くたびに見惚れてしまうゴシック体。そのせいかどうかは分からないけど、おしゃれなゴシックといえばAXISでしょう、みたいな。ある本ではゴシック体を「ゴナ系」と「こぶりな系」で分類していたけれど、この書体はどうだろう? 自分の中では「AXIS・ヒラギノ角ゴシック体・源ノ角ゴシック」がなんとなく同じ位置づけにある。

◯ヒラギノ角ゴシック体
モダンなゴシックでウエイトも豊富、見出しから本文に至るまで使いやすい。表情が明るく風が吹くようなイメージの書体。いちどヒラギノ角ゴのファミリーだけでデザインしてみたら凄く良くてハマってしまった。ヒラギノUD角ゴも好き。「ヒラギノ角ゴAD仮名」と混植すると「ゴナ」に近いバランス感覚が味わえる。

◯UD角ゴ_スモール(フォントワークス)
同社のニューロダンがベースとなったUD書体。仮名の大きいラージと、小さいスモールがあるが、自分好みなのはスモール。ニューロダンには「太くなるほど漢字が潰れる」という欠点があるのだが、UDという事もあってかそれが見事に解消されている。ニューロダンよりウエイトも豊富。

・・・力尽きた。丸ゴ編も書きたいです。
(順不同)

A1ゴシックとアンチック

この秋にリリースされた、
モリサワ「A1ゴシック」の普及が早く、
使用例をすぐに見つけられるような毎日になっています。
人気書体「A1明朝」の骨格をベースとした
ゴシック体として生まれたものです。

メーカーの解説文は以下のようになっています。

A1明朝の基本となる骨格を参照して作成された、オールドスタイルのゴシック体ファミリーです。線画の交差部分の墨だまり表現や、エレメントの端々に僅かな角丸処理を加えることで、温もりのあるデザインに仕上げています。 LからBまで4つのウエイトで展開されています。

実際の使用例は、例えば昨日の新聞にあったコチラ。

A1ゴシック・JA共済.png

A1ゴシック・JA共済3.png

年間ライセンスシステムである
「モリサワパスポート」を契約していれば
直ぐに使えてしまう新書体なので、
あっという間に普及したのでしょう。

これまで「中ゴシックBBB」「太ゴB101」
「見出ゴMB31」「ゴシックMB101ファミリー」の
独壇場だった場面がA1ゴシックに……という印象です。
(ちなみにワタシはこれらの書体の代わりに
「游ゴシック体」や「こぶりなゴシック」を選ぶ事が多いです)

形のバランスが良い書体とはお世辞にも言えませんが、
その表情がかえってファンを生み出しているように思えます。
英数字が、人気書体「Gotham」に近いというのも
大きいかもしれません。この墨溜まりや角丸処理は、
食品等の「シズル感」を伝えるのにも丁度良いでしょう。

「この流れで行くといつかA1丸ゴシックも……?」
と思ってしまうのですが、
モリサワの仮名書体「丸アンチック」は
A1ゴシックに似た骨格だったりします。
(墨溜まりや角丸処理は、ありませんが^_^;)

それもその筈、マンガのフキダシなどで使われる、
モリサワの「アンチック」自体が、
「A1明朝」をベースにしているように思えるからです。

A1ゴシック・丸アンチック.png

この4つは似通った骨格をしています。
もっとも、今回のA1ゴシックに関しては
「他のものよりレトロ感を強くしている」
という感じも致しますが……(^_^;)

この普及の速さを見ると、
モリサワのこのフォントは、
多くのユーザーの
ニーズを掴んだと言えるのでしょう。
同じくフォントワークスからも
「ユーザーのニーズを把握しているなぁ」
と感じるリリースが多くなっています。
写研とモリサワの記事を書いた自分ですら、
(Googleで「写研」と検索すると3番目に出てくる)
「写研の動向が何も見えなさすぎる」せいで
モリサワやフォントワークスへの期待を
高めることになる一方です。

しかし、モリサワの「A1明朝」には
「写研の石井明朝体オールドスタイルの複製」
という考察がつきまとうのだとか。
写研もいち早く書体をOpenType化することで
かつての勢いを放ってほしいと願うばかりです。

……にしても、A1ゴシックが「使いやすそう」なのは、
もうすごく分かる……!!!

採用しなかった2018年の年賀状

採用しなかった2018年の年賀状。戌年なので我が家の愛犬ミルキー(コーギー)が登場。このデザインだと女性からのものだと勘違いされるのと、なにより「盛った」感じのものは自分で作ったのにあまり好きではないので、別案を採用しました。本案は超シンプルです。(ここに載せた案の下が妙に空いてるのは、住所を載せる予定だった場所のためです)

2018年は宛名面もオリジナルですよ(予定)。

2008年賀状試作_3_B_Web用@4x.png

 

ぜんぶ山でおきたこと 東京チラシ

ここ2〜3年は個人名義でデザインをすることが滅多にないので、ブログで紹介できるお仕事は限られてしまいます。昨年に作った栗坂菜穂さんの写真集、「ぜんぶ山でおきたこと」の東京イベントチラシを紹介します。このチラシも作ったのは昨年末です。

デザイン=小倉佑太
地図製作=米田勝信

zenbuyana_tokyo-1

zenbuyana_tokyo-2

特別なことはしていませんが、いろいろ意見交換を重ねて何度も修正した結果です。地図のデザインは写真集本体のメインデザイナーである米田勝信さんにお願いしました(旭川イベントのチラシの地図も)。オモテはとくに、余白が美しく見えるように気をつかいました。東海大学関連のものは、自分の好みをストレートに表現できることが多く、とても満足しています。制作の機会を与えてくださった栗坂さんに心より御礼申し上げます。